帝王からの招待状
「船上パーティー?」
或る日、自宅の郵便受けに届いていた一通の招待状を受け取った幸村は、怪訝な表情を浮かべながら自室に戻ってその封を切っていた。
「……相変わらず派手だなぁ、跡部は」
中身を確認して、美々しい若者は苦笑混じりにそう言った。
幸村精市は、全国的にもトップクラスのテニスプレーヤーであり、現在は立海大附属中学に通う中学三年生。
普段は非常に温和で優しい性格なのだが、テニスに関わる事であったり、自身が許せない事があると、その心の奥底に隠されていた烈火の如く激しい気性の一面が垣間見える人物である。
そんな彼に問題の招待状を送りつけてきた人物というのが、跡部景吾。
幸村と同じく、都内の氷帝学園という学校の中学三年生であり、彼もまた全国的に名を知られたテニスプレイヤーである。
実はこの二人、他にも色々と共通点がある。
先ず、互いに、自分の所属する中学校の男子テニス部の部長であり、部員を強大なカリスマで引っ張っていること。
学内で絶大な人気を…特に女生徒からのそれを集めているが、彼らは一向に意に介していないということ。
流石に部長だけあり、テニスの技術レベルも高く、そしてテニスに関しては非常に強い思い入れがあること。
そして…それ以上に思い入れのある人物が、最近いること。
「招待状って事は、まぁそのパーティーにおいでって事なんだろうけど…ふぅん、アメリカの造船会社との業務提携を祝しての船上立食パーティー、か…確かにブン太とか切原は喜びそうだな…」
見たら、かなり大型且つ豪奢な客船を一隻借り切ってのものらしい。
おそらく参加するのも国内の有名人や著名人など多岐に渡るだろう。
そもそも自分達の様な中流家庭の子供が出ていいようなものでもないと思えるのだが…まぁ、跡部財閥の御曹司の友人ということで通すのだろう事は想像に難くない。
因みに、幸村だけではなく立海のレギュラーメンバー達にも同様の招待状を送っているという事は、その招待状の中で跡部が直筆で記している。
期日は今度の日曜日…特にその日、立海での部活動の予定はない。
「まぁ部の交流を図る、という意味ではいいのかもしれないけど…」
参加するのも悪くはないかな…と思っていたところで、幸村はその招待状にもう一つの相手からの直筆コメントがある事に気付いた。
『参加に当たっては、是非マネージャーでもある竜崎桜乃嬢も同伴されたし』
「…………」
それを見た瞬間、幸村は机上に置いていたボールペンで、迷う事無く『不参加』の項目に大きく勢いよく丸を付けていた。
「え〜〜〜〜っ!! 幸村参加しねーのっ!?」
「何だかやり場の無い怒りに襲われてね…」
翌日の立海で、同じレギュラーの丸井は部室であの招待状を振り回しながら部長に迫っていた。
「俺達だけならともかく、竜崎さんまで同伴させる必要はないと思うんだ。彼女を連れずに行ってとやかく言われるぐらいなら、最初から参加しない方がましだね」
「うう〜〜〜〜」
きっと今頃丸井の脳内では、船上立食パーティーでの豪華なメニューがこれでもかと並んでいるに違いない。
別に脳を覗かなくても分かる、その今にも涎が溢れ出しそうな口元を見たら。
「まぁ確かに俺達が受け取った招待状にも、同じ事は書かれていたがな」
別に参加でも不参加でもどちらでもいいというスタンスらしい副部長の真田は、腕を組んでふうと軽く息をついた。
「見た感じ、俺らをメインっぽく書いちょるが、実際アイツにとっては俺達こそオマケレベルじゃろ。本当に呼びたいんは竜崎だけじゃと思うがのう」
「同感ですね」
「だから嫌なんだよ」
詐欺師の異名を持つ仁王と、紳士の異名を持つ柳生二人の意見に賛同しながら、あくまで幸村は不参加の意思を示した。
別に、自分達がおまけレベルで扱われることについては正直どうでもいい。
それより何より彼らにとって重要なのは、竜崎桜乃という少女の参加という項目だった。
実は彼女こそ、幸村と跡部の最後の共通項。
彼らは二人ともが、この少女をいたく気に入ってしまっているのだった。
まぁ立海側に関して言えば、幸村だけに留まらず、レギュラー全員が彼女の事は好ましく思っているのだが。
ではその竜崎桜乃とはどういう人物なのか?
彼女は元々は青学に通う中学一年生の女子であり、入学後にテニスを始めた言わば初心者。
別に家は取り立てて裕福という訳でもなく、かと言って貧困に喘いでいる訳でもない、ごくごく普通の家庭のひとりっこであり、家族に関しての特徴も、せいぜい祖母が青学のテニス部顧問をしているという程度。
見た目はまぁ十分に可愛らしい部類に入るが、それでも過度の華やかさとは無縁で、専ら普段はおさげに制服と言った地味スタイル。
言ってしまえば、立海メンバーにとっても跡部にとっても、見た目だけならもっと上のレベルのファンや取り巻きはわんさといるのだ。
それでも彼女に彼らが注目したのは、偏にその見た目ではなく性格だった。
内気で大人しく、従順で素直…決して出しゃばることはなく、相手を立てる事を第一とする。
そんな性格を物足りないと思う男性も確かにいるだろう。
しかし、少なくとも立海のメンバー達にとって、そういう女性は稀有な存在だった。
傍にいてさり気ない気配りと優しさを感じさせ、それを押し付けることのない少女は、今までの自分達の取り巻きには一人もいなかった。
その心地良さに、若者達は夢中になった。
最初は、超がつく程に初心者だった桜乃にテニスを教えるだけだったのだが、その内自然と雑談をしたりするようになり、向こうも徐々にこちらに懐いてくれるようになって…メンバーは悉く陥落した。
今となっては、彼女は彼ら全員に共通した妹分の様な存在になっている。
そして桜乃もまた同じ様に立海のメンバー達を慕い、その勢いに乗ってしまってとうとう青学から立海へと転校までしてしまったのだった。
それから彼女はすぐに男子テニス部のマネージャーに就き、日々厳しくも優しいレギュラー達の指導を受けて修行中。
正に、立海メンバーにとっては『我が世の春』を謳歌していたのだ。
ところが最近になって、その環境にささやかな異変が起きつつある。
桜乃が立海に転校しマネージャーになってから、氷帝のテニス部部長である跡部が、彼女にアプローチを始めたのだ。
青学に彼女がいた時には、殆どそんな素振りはなかったのに、である。
何で今になって!?と立海の一部部員が騒いだ時、参謀である柳は冷静にその理由を指摘した。
『彼女がマネージャーに就いたのは、ある意味俺達にとっては諸刃の刃だったな』
その通り。
青学にいた時には、桜乃は只の女子テニス部部員であり、男子テニス部にとっても単なる観客の一人に過ぎなかった…だから必然的に氷帝のテニス部との接触は無きに等しかったのだ。
ところが今の彼女は立海男子テニス部の『マネージャー』…となると当然、練習試合やら会合やらの時に、向こうのテニス部員達と接触する機会は大幅に増えている。
青学にいた時も立海にいる時も、桜乃の性格は根本的に変わっていない。
変わったのは、跡部の目につくところに居るようになった事だ。
立海の面子のお眼鏡に適った女子が、眼力をもつ跡部の目に留まらない筈もなく、興味を呼び起こさない筈もなく…結果、彼らと同じ様に跡部もまた桜乃の素朴な人となりにやられてしまったのだった。
しかも、立海側にとって更に厄介なのは、跡部という人物が凡人ではなかったという事だ。
もしそこいらにいる様な男子だったらすぐにでも排除してしまえただろうに、向こうもかなりのイケメンで、しかも頭脳明晰、スポーツ万能、おまけに日本屈指の大富豪ともなれば、桜乃から引き離す正当な理由がないのである。
まぁ強いてあげれば『あのノリが嫌』ということぐらいだろうか。
性格も俺様ではあるが相手に対する気遣いは心得ており、それもまた厄介な問題。
お陰で最近では、桜乃本人も徐々に跡部に対して心を開きつつあり、正に立海の『お兄ちゃん』達にとっては由々しき事態に発展しつつあった。
そんな時に、船上パーティー…桜乃を同伴で。
心情的に許せる筈がない。
(冷静に考えたら跡部はああ見えて堅気だし、金も名誉も申し分ない奴だから、超玉の輿なんだけどなぁ……)
唯一、この件では最も冷静で常識人であるジャッカルは内心ではまんざらではない様子だったのだが、周囲の仲間達の様子の前では、なかなかそれをはっきりと言う事も難しいらしい。
きっとそれぞれの男達の中でのベストエンディングは、当人と桜乃が恋人同士になるという事なのだろう…
「うう…竜崎は渡したくないしそのつもりも無いけど、パーティー料理だけが気になる…」
桜乃の事は心配しつつも、どうしても今はまだ色気より食い気の切原が、未練たっぷりに招待状を見つめる。
「全員不参加っていうのも角が立つし、君達が行きたいなら行っても構わないよ?」
「そりゃあ有り難いッスけど…」
「そんな見知った顔もそういない場所に俺らだけってのもなぁ…やっぱ行くなら全員で行って楽しく騒ぎたいじゃん」
どんなに美味しいものでも、それを食べる環境で感じる味はかなり変わってくる事を、丸井はよく分かっている。
彼にとっての一番の調味料は、空腹と、美味しい料理を気心の知れた仲間や家族と一緒に食べる事なのだ。
「うーんうーん…あ、行くだけ行ってタッパーに詰めて帰って来るって手も…」
「素直にもう参加しなよ…」
「立海の恥になるような行動は慎め」
丸井の苦肉の策に対して部長と副部長が冷静に突っ込んだのとほぼ同時に、部室内に渦中のマネージャーが入って来た。
「こんにちは。あ、やっぱり皆さんも受け取られたんですね」
朗らかな笑みを浮かべて入って来た桜乃は、彼らの手に握られていた例の招待状を見て、更に笑顔を深くした。
どうやら少女にとっては、既に行く気満々のイベントになっているらしい。
「船の上でのパーティーなんて、楽しみですね! 私には特別に衣装も貸して下さるって、跡部さんが…」
「…悪いんだけど、竜崎さん」
楽しそうに話す少女に申し訳ないとは思いつつも、幸村はきっぱりと相手に断った。
「俺達は、跡部のパーティーには行かないよ。別にパーティーに行かなくても、俺達だけで集まって遊ぶ場所はあるだろうし、そっちの方が気兼ねも要らないしね」
「え…」
行かないんですか…?という桜乃の瞳での訴えに、男達は仕方がない、といった様子で無言で応じる。
どうやら冗談ではなく、本気での回答らしいと察すると、桜乃は目に見えて明らかに落胆した様子だった。
しかし、そこは立海側のマネージャーとしての自覚の見せ所…
「そっ…そう、ですか…幸村部長が行かれないなら…私も、別に…」
『…………』
くしゅん…と鼻を鳴らし、瞳を潤ませながら、桜乃は必死に主張した。
「べ、別に…行きたくは、ないですし…っ」
下手にダダをこねてねだられるより、そっちの方が余程男達の心が痛んだ。
幸村の言葉にも一理あるし、跡部の許にもやりたくはないのだが…桜乃の涙にはメンバー全員、例外なく弱いのだった。
『ゆ、幸村、やっぱ行こうよ! 俺ちゃんといい子にするから!』
『もうちょっとで泣いちゃうッス!!』
『俺らが全員参加でアイツをガードしたらいいんじゃないか…?』
『…ピヨッ』
『じょ、女子を泣かせるのは如何なものかと…!』
向こうが泣き真似ではなく心から悲しんでいるというのが尚更たちが悪い…
あわあわと慌てまくって自分達に縋ってくるレギュラーに対し、三強もどうしようかと心から困惑の表情を浮かべていた。
このまま意地を通して不参加にしても、桜乃もちゃんと従ってはくれるだろうし、こちらを恨んだりもしないだろう…しかし…
「………はぁ」
遂に、神の子が折れた。
「…じゃあ行こうか、パーティー。俺達が行きたいって事で」
そして、桜乃の健気な態度は見事に立海のメンバー達を動かしたのであった。
「という訳で、お招きに預かった訳ですが」
「改めて、すげぇセレビリティー……何だよいこの船」
当日、パーティー会場になっている船に乗った立海メンバーは、その想像以上の豪華さに目を丸くしていた。
裕に二千人は収容出来る程の大型豪華客船…乗船してエントランスでたむろっているが、そこだけでも学校の体育館の数倍はある…
「全長は三百五十メートル、総トン数は百五十トン、収容可能人数は二千五百人余り…間違いなく世界トップクラスの豪華客船だな」
柳の説明の詳しい数字はさっぱりだが、最後の台詞には十分に納得出来る。
勿論今は港に接岸しているので動いていないのだが、きっとこれだけ大きければ航行している中でも揺れなど一切感じないだろう。
大きさもトップクラスなら、内装の豪華さもトップクラス。
煌びやかなシャンデリアに足元は深紅の絨毯。
招かれた客人たちをもてなす為に、エントランスに設けられた小楽団の生演奏…
「…よござんすな、セレブは」
「お前はたまにハーフらしからぬ発言をするな…」
遠い目をして呟く仲間に、真田は首を傾げながら声を掛けたが、すぐにその視線は自分の足元へと落とされた。
先程から歩くたびに、ふっかふっかふっか…と心許ない踏み具合である絨毯が、歩きづらくて仕方ないらしい。
いや待て、歩き辛いという事はそれを応用して何かの訓練に活かせないものか…と早速ずれた事を考え始めた副部長の向こうでは、まるで王宮の様な船内の様子に、桜乃がきょろきょろとせわしなく辺りを見回している。
その瞳はキラキラと輝き、正にお姫様に憧れる女性そのものだ。
「ま、跡部の思うままじゃろうが、竜崎が喜んでくれとるならええかのう」
「そうですね…竜崎さん、あまり落ち着きなく辺りを見回してはいけませんよ」
貴女はレディーなのですから、と流石に紳士然とした柳生がそう優しく嗜めると、向こうは彼らに気付いて、嬉しそうに駆け寄って来た。
「えとえと、皆さん! 今ここで火事があったら、あそこの避難場所から逃げて下さいね!」
『……………』
微妙な顔で自分を見つめる彼らに気付かず、桜乃はきゃあ〜と興奮しながら、自分が立てた避難計画を披露する。
「ホールに案内されても、大体の経路は覚えましたからバッチリですよ! 凄い船ですよね、こんなに広いだけあって、救命ボートも沢山で、非常事態の時の対応もちゃんとしてます〜〜」
常に万が一の事態を想定して行動するのは確かに重要な事だとは理解しているが…うら若き乙女が、これだけの豪華客船に乗船して、最初に考えるのが避難経路…?
「……っ!!」
何故か分からないが、物凄く不憫に思えたジャッカルが涙を堪えて少女をいい子いい子と撫でている向こうでは、柳が仁王達に迫られていた。
「お前さん、ちょっと竜崎を厳しく教育しすぎとらんか…?」
「や、やはりそうか…?」
流石に今の桜乃を見た参謀も多少の不安を感じてしまったらしく、受け答えが曖昧だ。
そんな彼らが他の招待客達から不思議そうに視線を向けられているところで、ようやくこの日のホストが登場した。
「何やってるんだお前ら…」
「あ、跡部さん」
にこっと微笑んでそちらを見た桜乃の瞳に映ったのは、今回のパーティーの主催者でもある跡部だった。
流石に今日はいつもの服ではなく、ホストらしくタキシードで決めている。
中学生であるにも関わらず、その威風堂々とした出で立ちは、そこらの成人男性の貫禄と何ら変わらない…いや、それ以上だ。
帝王として生まれ育てられた、紛うことなきセレブの中のセレブである男は、立海のメンバーの全員参加…と、桜乃の存在をすぐに確認した。
「よく来たな、歓迎するぜ」
「こちらこそ、招待してくれて有難う。立派な船じゃないか」
先ずは、お互いの部の部長同士でそつのない挨拶…と言う名の腹の探りあい。
『別に竜崎だけでもこっちは全く構わなかったんだがなぁ』
『嫌だな、ライオンの前にウサギを野放しにする様な真似、出来る訳ないじゃないか』
ははは、ふふふ、と笑い合う部長達の頭上に、早くも暗雲が立ち込めている様な気配を感じ取り、他のメンバーが凍りつく。
「…ジャッカル、胃薬持って来た?」
「ああ、大量に」
「ちょっと分けて、食う前に飲んどくから」
丸井がジャッカルからこそこそこそ…と胃薬を分けてもらっている間に、跡部は普段着の桜乃に振り返った。
「竜崎、先生からの預かり物は?」
「はい、持って来ていますよ、どうぞ?」
幸村達の面前で、桜乃が跡部に差出したのは、B5サイズの大きさの茶封筒だった。
何か書類でも入っているのか、それを受け取った跡部は微笑んで頷く。
「すまなかったな、お前を使う形になってしまって」
「いいえ、ついでですから。やっぱりこれもテニス関係の書類ですか?」
「まぁそんな感じだな…結構重要なものなんだ」
何だろうと純粋に疑問に思っている立海側の注目の中で、跡部は気を取り直して桜乃に声を掛ける。
「折角のパーティーだ、楽しんでいけ。ああ、お前にはちゃんとドレスも準備しているからこっちに…」
声を掛けつつ、桜乃の小さく細い肩に跡部が手を置こうとそれを伸ばしたが…
ぺちっ
「……」
「……」
間髪入れず、幸村が軽く相手の手の甲を叩いてそれを阻止。
「?」
自分の死角での出来事だったので、桜乃本人は何が起こっているのか気付いていない。
しかし、問題の瞬間を目撃する羽目になってしまったレギュラー達は、更に自分達の血が凍りそうな悪寒を感じてしまった。
「今日は冷えるのう…」
「今ならシベリアでも半袖で歩けますよ…」
それが何による悪寒かは深くは語らず、詐欺師と紳士が溜息をついている向こうで、静かな戦いは一応互いが引く形となって終了した。
「全く…相変わらずの溺愛っぷりだな、天下の立海が」
「それとこれとは話が別」
こんな所で大人気ない喧嘩をしても意味がない…その自覚はあるらしく、帝王はやれやれと言いながら、メイドを呼びつけ、彼女に桜乃を任せた。
それなら立海も文句はない。
「じゃあ、行って来ますねー」
「気をつけて」
柳の言葉に送られて、桜乃は一時準備された部屋へと案内されて行き、姿を消した。
「君は招待客の相手はいいのかい」
「ああ、今はもうビジネスの話だから担当の奴らに任せている、まぁ優秀な社員ばかりだから問題ない…俺は代表の父親の代わりという立場だ。やはりこういう場所に身内が出るとそれだけで心証はかなり違うし、一部の人間には威嚇にもなるからな」
華やかに見える社交界は、決して綺麗ごとだけの世界ではない。
笑顔の下ではいつこちらの足を引っ張ってやろうかと狙っている輩も少なくないのだ。
そんな世界を幼い頃より見つめ続けてきた跡部だからこそ、その言葉には重みがある。
「…強い光は強い闇を生む、か」
察した様子で真田が言ったが、跡部は気にしていないとばかりに薄く笑った。
「まぁ慣れているからな、そんなに簡単に転んだりしねぇよ…下らない話はこれぐらいにするか、楽しんでいってくれ」
そして、跡部直々の案内を受けて、彼らはホールへと移動していった。
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