悉伽羅の家出(前編)
「すぅ……すぅ……」
ここは人住む里より遥か離れた山の奥…
野には風が渡り、天には雲が渡る平和な世界。
草花も獣も自然の摂理に従いながら生きてゆくこの地で、若き神である幸は、その日も呑気に己の寝床で昼間から安らかな眠りを楽しんでいた。
そんなのどかな一時を、突如として打ち破る叫び声。
『だーもーいい加減にしろ〜〜〜〜〜っ!!』
「……ん?」
ふにゃ…と微かに目を開いたその神は、それからしぱしぱと数回の瞬きを繰り返し、僅かに頭を布団から上げた。
聞こえてきたのは確かに気合の入った叫びだったのだが、音の出所は遠かったらしく、音量そのものはそんなに大きいものではない。
しかし、自身のいる間には確実に届けられてきた音に、幸はゆっくりと数回頭を振って眠気を払いながらゆっくりと上体を起こした。
「………何かあったのかな?」
神通力を使えばその程度の情報を得るのは簡単だっただろうが、幸は最初からそれを使う事を放棄した。
別に理由があっての事ではない、単純に面倒だからだ。
そもそも大事があった場合にはあの程度の叫び声などでは済まないし、何より、自身の守護を務める鬼の化身の様な男が黙ってはいない。
それに、幸に付き従っている僕の殆どは普段から賑やかで楽しい事が大好きなので、あの程度の声は珍しいものでもないのだ。
さて、起きはしたがどうしよう…と思っていたところで、今度はどたどたどたっと騒がしい足音が聞こえてくる。
(あ、良かった)
どうやら騒ぎは向こうから向かって来てくれるらしい…と何処までも横着な神は、取り敢えずは自身の布団の上に座して、騒動の元凶を待った。
『悉伽羅、少し落ち着け』
『いーやっ! 止めないでくれ蓮っ! 今度と言う今度はもう我慢の限界だー!!』
『ふええええん、悉伽羅様〜〜〜、喧嘩したら嫌ですよう〜〜〜!』
様々な声音の者達が何だかんだと言い合っている声が響いてきたが、幸はそれらの全てを聞き分け、既に何かを察して頷いていた。
「ああ………そう言えばそろそろ…」
彼が頷いたところで、ばーんっと派手に彼の間へ続く扉が開かれ、どどっと幸の僕達の内の数名がなだれ込んできた。
「幸〜〜っ! もう文太と赤也を何とかしろーっ!! 何度も何度も俺の言いつけ破るわ悪戯するわ、ほんっとうに耳があるのかあいつらは〜〜〜〜〜っ!!」
「だから、もっと静かに話せ悉伽羅。怒鳴らなくとも幸には聞こえている」
「ええええん、幸様、申し訳ありません、お昼寝中に〜〜〜〜っ!!」
怒鳴ったり、諌めたり、謝罪したりと、実に反応が様々な僕を迎えながら、幸本人はあくまでも時間の流れが違うのではないかと思わせるような呑気さだった。
「ん、おはよう。みんな、元気で好いことだね」
「幸…」
あまりに場を読んでない幸の発言にやや困惑気味に声を掛けたのは、彼とほぼ同位の立場にある蓮という妖。
幸の従える僕の中でも最も知識を有し、それ故に沈着冷静に物事を考える能力に長けている者である。
そんな物静かな妖が諌めていたと思われるのは、束帯を纏った蓮や幸とは異なり、水平を身につけた若者、悉伽羅だった。
彼も妖だが、見た目は他の妖や幸よりも肌の色が極端に濃く、異形の類を思わせる。
それは実は彼が妖となる以前…人だった頃からのありのままの姿であり、それ故に悉伽羅は長く人から迫害されてきたという過去があった。
そしてその彼に縋って、必死に止めようとしているのは、唯一女性の姿をした妖…桜姫。
実はごく最近幸の手によって妖となった娘であり、仲間内の中では最も非力な存在でもある。
しかし妖達の中で最も汚れを知らず純粋なままの娘である事が、他の者達の心の大きな慰めとなったのか、彼女はいつも幸も含めた仲間達に大事にされ、平和で楽しい日々を過ごしていた。
そんな大事な姫に縋られながらも、幸の間に血相を変えて乗り込んできたのだから、普段は温厚な悉伽羅の怒りの程が伺える。
「分かっているよ、蓮……どうせまた、文太と赤也の悪戯が過ぎたんだろう…何を仕出かしたのかは聞く気も起きないけどね」
「悪戯なんてもんじゃないっ!!」
幸の指摘に、悉伽羅が鋭く怒りも露に突っ込んだ。
「大体あいつらはな〜〜〜っ!! べらべらべらべらべらべらべらべら………!!」
以降、延々と続くあの二人の悪行の記録暴露話…
(だから聞く気も起きなかったのに…)
あーあ、と思いながらも、幸は仕方なく悉伽羅の気の済むままにさせてやった。
自分達は時間という縛りから解放された存在。
同等の神々や妖達に傷つけられ、滅されない限りは、永劫に存在出来る者達なのだ。
だから、こういう無駄な時間をどれだけ費やそうが構うものではないし、何より、怒りが先に立っている悉伽羅を落ち着かせるには、敢えてそれをぶちまけさせる事も必要になる。
(でもまぁ、本当によくこれだけの悪戯を考え付くよ…よっぽど暇を持て余しているんだろうな…)
昼寝は気持ちいいのにな…と色々と考えを巡らせている間に、ようやく悉伽羅の暴露話も終了した様で、語りが終わった後、彼はぜいぜいと激しく息を切らせていた。
かなりの熱弁っぷりだったので、無理もない。
「……お疲れ様」
それしか言えない幸が相手をねぎらうと、そこでようやく話は本題に入った。
「で、な……もう俺が何度言っても無理なら、幸に何とかしてもらおうと…」
「吾に?」
「もう二度と悪戯を仕出かさないようにきつい罰を与えるとか…とにかく、あいつらが大人しくなるように出来ないもんか?」
「うーん…相手の心を弄るような真似は嫌いなんだよ…きつい罰ね…」
悉伽羅に請われて、幸は真面目に考えて相手に提案した。
「……そんなに聞く意思のない耳なら、いっそ引き千切ってしまおうか?」
「いや〜〜〜〜っ!!」
慌てて幸に縋りついて否定の声を上げたのは、桜姫だった。
「お願いしますお願いします! そんな酷いことはしないで下さい、お二人があまりに可哀相です〜〜〜!!」
しかも、姫だけでなく、さっきまで彼らへの罰を望んでいた筈の悉伽羅までもが幸を必死に止めていた。
「そそそ、そこまでやるのは流石にっ!! お、俺としては二人が反省してくれたらいいんであって…!!」
「君がどうしてそこまで苦労を背負うのか、よく分かるよ…」
どれだけ酷い目に遭わされても、非情になり切れない心の甘さが自分の首を絞めているというのに…と思いながらも、幸はそれを責める事はしない。
代わりに、彼は一つの提案を悉伽羅に与えた。
「…まぁ、悉伽羅が随分と心を疲弊させている事は分かったよ…どうだろう、ここは少し気分を変えてみたら?」
「気分?」
蓮が幸に視線を向けると、向こうは楽しそうに悉伽羅を見て頷いていた。
「ちょっと旅に出るんだよ。あの二人の世話から少し離れて人里にでも下りたら、良い気分転換にもなるだろうし…どう?」
「旅…」
その言葉を聞いて、悉伽羅はふと妖になる以前の己の姿を思い出す。
あの頃も、自身の姿を隠しながら、人目を避けるように浮き草の如く旅をしていた。
黄色い肌の中に、己のそれは目立ち過ぎ、一つところには留まることが出来なかった。
流れ流れて…結局、己の旅の終わりは、命の終わりと同じ時、同じ場所。
『さぁ、吾と来るんだ』
死を迎える瞬間、この神の呼び声を聞き…己は妖になった。
それからは、神と、既に彼の傍にいた妖達と共に生き、初めて住処というものをもったのだ。
以来、時折人里に下りたりもした事はあったが…そう言えば、暫く下界には降りてなかった。
辛い思い出も多かったが、あの人生の中で数多く見た美しいこの国の景色は忘れられない。
「…そうだなぁ」
それもいいな、と賛同の意思を見せた悉伽羅に、桜が不安げな面持ちで尋ねた。
「…悉伽羅様、行ってしまわれるんですか?」
暫しの別れを悲しむ姫に、幸が優しく慰めの言葉を掛ける。
「ここは悉伽羅の為に我慢をしておくれよ、姫。このまま永劫に会えない訳じゃない。幸い、吾らには時間は十分過ぎる程にあるのだからね」
「…はい」
幸の言葉もあり、自分が我侭を言える事でもないと、桜姫は十分に理解していた。
理解していたから、それ以上は強く言わずに引くしかない。
「すまんなぁ、姫……しかし、なぁ、ちょっと不安だ」
「不安…? 今の処はここに人が踏み込む気配もないし、すこぶる平和だが」
そんなに非力な吾らでもないぞ、と断る蓮に、悉伽羅はいや、と手を振った。
「……俺がいなくなったら、文太と赤也は大丈夫なんだろうか…」
「何なんだよ君は」
相手方に対し、怒っていたかと思えば、もう二人の心配をしている悉伽羅に、幸は呆れた声で突っ込んだ。
結局、神に突っ込まれながら、悉伽羅は旅に出る旨の了解を彼より受け、桜からはお弁当の差し入れまでしてもらって、久し振りに山を下りたのであった……
二週間後……
「ん? どうした、姫。浮かん顔じゃのう」
「また、悉伽羅のことですか?」
「あ…仁王様、柳生様も」
山の奥で変わらず穏やかな日々を送っていた妖達は、ぼんやりと山の景色を眺めていた新参者の桜に気遣いの言葉を掛けていた。
仁王と柳生は、かつてそれぞれに因縁があった者達らしいが、今はそれについて深くは語ることもなく、妖としての日々に興じている。
特に仁王は最初に桜を幸へと目通しをさせた張本人でもあり、その所為か、彼女の事はなにかと気に掛けてやっている様だ。
そんな優しい彼らに、桜は静かに微笑んで素直にこくりと頷いた。
「一人いなくなっても、凄く寂しくなるんですね…ちゃんとこの空の下の何処かで生きてらっしゃることは分かっていても、どうしても気になってしまって…」
「そうですね…桜姫が来てから、彼が旅に出るのは初めてでしたから、慣れないのは当然です」
柳生の頷きと共に呟かれた言葉に、桜がきょとんとする。
「私が来てから…? では、悉伽羅様が旅に出るのは…」
「おう、これが初めてじゃないんじゃ。結構俺らの中ではよく下界に降りる方よ……ま、大体の理由は、赤也と文太に振り回されて、鬱屈溜まって飛び出すんじゃがな。今回はまぁ持った方かのう…」
「そんなに…」
お気の毒に…と心底思う姫に、仁王は笑って手をひらひら振った。
「その度に、赤也と文太もそれなりの罰を受けるんじゃが、本当にどっちもよく飽きんもんよ」
そう言ったところで、遠くから誰かの声が聞こえてきた。
『赤也―――――っ!! 相変わらず悉伽羅は非情にはなりきれなかった様だが、吾の許についている以上は甘えは許さんぞ! そのたるみきった根性、今度こそ叩きなおしてくれる!!』
『ぎゃ〜〜〜〜〜っ!! 弦主、勘弁っ!』
心地良い程に聞こえてくる通りの良い怒声は、幸に傅く妖達を取りまとめる弦という妖のもの。
太刀を揮えば一騎当千、百戦錬磨、並ぶもののない剛の者である。
常に己を鍛える事に邁進している妖は、何かと自分自身を甘やかしてしまう赤也に常日頃からくどくどと説教を繰り返していたのだが、あまり改善されている試しはない。
その所為で今回の悉伽羅の出奔騒動になってしまった事もあり、弦は今度こそ、と怒りも激しく、悉伽羅がいなくなった後での赤也の世話を引き受けたのだった。
因みにもう一人、文太という妖も赤也同様に蓮に預けられるコトになり、こっちはこっちで長々と部屋に閉じ込められて書物を読まされたり書かされたりと、かなり気が滅入る日々を送らされている様だ。
無論、彼らに預ける事を最終的に決定したのは神の幸であり、それが二人に対しての罰ということなのだろう。
耳を千切るとか非情な事を言ってはいたが、優しい神は結局、妥当なところで決を下したらしい。
「…あのお二人も、ちょっとお気の毒です。最近はすっかり元気を失くされて…」
「たまにはいいでしょう。元気がないのではなく、程よく疲弊させられて、大人しくなっているだけですよ……悉伽羅があれだけ厳しければいいのでしょうが、なかなかね…」
「悉伽羅様…」
結局、話が元に戻ってしまい、仁王は桜の頭をぽむと優しく叩いた。
「そう心配するな。アイツはアイツで今頃は何処ぞで楽しんどるじゃろう。気が向いたらまた此処に戻って来るけ、それを楽しみに待つんじゃな」
「はい……それにしても、何処にいらっしゃるんでしょうね」
その悉伽羅は…
「おお〜〜、流石に都に近くなると、人の通りも激しくなるもんだなぁ」
都に向かってのんびりと旅を続けていた悉伽羅は、とある野道をてくてくと歩いていた。
これまで歩いてきた道はたまに小さな村々を通り抜ける程度の役しかなく、人と擦れ違うことも少なかったが、ここに来てちらほらと何となく賑やかさを感じられるようになってきた。
「都かぁ…どうも人の多い処は慣れてない所為か落ち着かないんだよなぁ…色々な店があるのは楽しそうだが、それより、今日の宿をどうするかだな」
う〜ん、と悩みながら歩いていた彼は普段通りの色黒の肌だったが、通り過ぎてゆく人々は彼に対して何の注意を向ける様子もなく、時折会釈して過ぎる程度だ。
それは彼が前もって己に掛けていたまじないの効果だった。
肌を変えることをしなくても、相手の眼を騙せば事は足りる…妖になって覚えた術を用いて、彼は完全にこの国の人々の中に溶け込んでいた。
「見たところ、周囲には宿らしいもんはないし、かと言ってどっかの家に転がり込むのもなぁ…やっぱ野宿か…おっ?」
言っていた悉伽羅の視線が、少し先の小さなお堂に止まる。
本当に小さな堂だが、雨露を凌ぐ程度の役には立ちそうだ…
(丁度良い、あそこに一晩の宿を借りるか…見たところ、先に何かの妖がいるような気配もないし)
ついている!と喜びながら、悉伽羅はその堂へと向かって行った。
少し離れた処に村が見えていることから、普段の管理はそこの誰かが行っているのだろうか?
何の為に建立されたかは知らないが、まだそんなに古いものではなさそうな…
「……ま、お邪魔します…っと」
一応、堂の入り口で一礼し、かたりと入り口を開く。
中には誰もいない…中央奥に、一体の地蔵が置いてあるだけだ。
堂の隅にはうっすらとくもの巣が張り、普段の参拝の客も殆どいないだろう事が伺えたのだが、やけに新しい、しおれた野花が幾本も地蔵の前に手向けられているのが気になる。
通りすがりの旅人の気紛れだろうか…?
「ありゃりゃ、何とも寂しいお住まい…ふむ、なかなか良いお顔をしているのになぁ。取り敢えず、軽く掃除しとくか」
紛いなりにも人様の家を借りて過ごそうというのだから、そこは感謝の気持ちを忘れてはならない。
せめてものお返しにと、悉伽羅は堂の中を簡単に掃除し、小奇麗になったところでようやくやれやれと地蔵の背後で腰を降ろした。
ここなら人に見つからず、術を解くことが出来る。
「よしよし、まぁこれで一宿分の宿代にはなっただろう…はぁ…」
と、軽く息をついたのも束の間…
『お姉ちゃん、こっちこっち』
『うん』
明らかに堂に向かってくる子供達の声が聞こえてきて、悉伽羅はわたわたと慌て出した。
「うえええ! 術を解いたばっかりだってのに…ああ、けど会っても面倒だし…よし」
ぱぱっと素早く印を切り、悉伽羅は今度は自身の姿を一時的に消す術を掛けた。
これで後は気配を消し、声を殺せば、向こうは勝手に来て、勝手にいなくなってくれるだろう。
念の為に自分の口を手で押さえて自衛に徹している間に、いよいよ堂を開けて二人の娘達が入って来た。
年の頃は上の子が五つか六つ…妹は四つぐらいだった。
しかし、彼女達は堂で遊ぶ様子はなく、意外にも静かに上がり込むと、地蔵の前にちょこんと座り、手を合わせて拝み出したのだった。
「お地蔵さん、お願いします、お母の病気を治して下さい」
「もうずっと寝込んで、何も食べようとしないんです。お父もずっと心配しています、お願いします、治してあげて下さい」
「……?」
願い事をする彼女達の声が聞こえて、悉伽羅が興味を持ってひょこりと向こうから覗いてみる。
勿論、術を掛けているので、二人にこちらの姿は見えない。
(…ありゃあ、随分と小さな娘っ子達だな、桜姫よりずっと小さい……村は結構遠かったのに、ここまで来たのか)
そうして覗き込んでいる彼の前で、娘達は自分達が摘んできたのだろう野花を地蔵の前に供えていた。
あのしおれた花々も、きっと彼女達が供えたものだったのだろう、という事は、ここに拝みに来たのは初めてではないという事か…
(そうか…親が病に倒れたか…村娘でこんなに小さければ、薬もろくに買えんだろう)
そもそもこの時代、良薬そのものが非常に高価である為、村人がそう手に入れられる筈はない。
病に倒れて命を落とすも、その者の運命であり、寿命であったと諦めざるを得ない今の世だが、悉伽羅はついその娘達に同情してしまった。
(うーん……あ、そうだ)
悉伽羅は二人がなむなむと拝んでいる隙に、こっそりと自身の腰に下げていた布袋から、更に小さな小袋を取り出した。
中からころころっと出てきたのは、真っ黒な丸薬…
いつか柳生が調合したそれを、旅の役に立つかと思い持ってきたものだった。
『滋養強壮の薬です。この山で採れる生薬は良いものですから、効果も非常に期待出来ますよ。人ならば、一粒でも十分に効く程ですから』
(っつってたな〜……うむむ、じゃあこれも宿代で…)
やるのは自分じゃなくてこのお地蔵様ということにしておこう、と、悉伽羅はその丸薬を一粒、懐に入れていた和紙を千切って中に包み、ぎゅっと端々を合わせて捻りとめると、ひょいっとそこから二人の方へと放り投げた。
ことん…
「!?」
「? あれなぁに、お姉ちゃん」
二人は、それまでは無かった筈の和紙の包みを不思議そうに見つめ、取り上げて開いてみた。
「…なんだろう、お薬かな?」
「お地蔵様がくれたのかも!」
「ほんと!? じゃあ、お母に飲ませてみよう!」
二人は上手く悉伽羅が目論んでいた通りの予想をたてて、行動してくれた。
早速、母親にその丸薬を飲ませてみようと、彼女達は堂を立ち去って行き、そして悉伽羅は今度こそくったりと身体を脱力させて安らいだ。
「あ〜〜〜…疲れた…こ、今度こそ寝るぞ俺は…」
もう誰も来ませんように…と願いながら、悉伽羅はうとうととそこで眠りに就いてしまった……
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