「おお、ここでも血を見るイベントが…」
「バカッ!! なに呑気なコト言ってんだ!」
丸井を叱りつつ、ジャッカルが辺りを即座に見回す。
こんな場所で女性の悲鳴…となると、物盗りだったり、痴漢行為だったりというものがすぐに頭に浮かんでくるのだが…
聞こえた先には、自分達が丁度足を運ぼうとしていた店がある筈だ。
もしかしたら女性が被害に遭っているのではなく、男性同士の喧嘩だったりそういう騒動なのかもしれない…こういう場所でアルコールが入って騒ぐという話は何処にでも転がっている。
「どうする? 行ってみるか?」
真田が善良な市民として確認すべきか否かを尋ねたが、柳と幸村は即答を避けた。
「うーん…部外者の俺達がしゃしゃり出たところで、却って混乱しそうだな…」
「この賑やかさなら警察も巡回している筈だ。彼らが来るまでは、最悪の事態が生じない限りは静観した方がいい場合もある」
柳の言う最悪の事態というのは、傷害事件やその騒動で周囲の人間達にまで危害が及ぶという事だろう。
只の口喧嘩や威嚇による物損程度なら、後で本人が後悔したら事は済む…
しかし、何が起こっているのか、という確認は、生憎、幸村達殆どのメンバーには人混みと立ち位置の関係から困難だった。
場所と視力と身長から最も適していた位置にいたのは…ジャッカルだ。
「…んー…ここからじゃ見えないな…どぉ? ジャッカル、何か見える?」
「……うーん」
何故か、非常に渋い顔でジャッカルが唸った。
「こりゃもう既に最悪の事態なんだろうなぁ…俺の見間違いじゃなければ」
「え? やっぱり喧嘩かい!?」
少々慌てた様子で部長が聞き返したが、ジャッカルはやはり渋い顔で、今度ははぁ〜と溜息までつき始めた。
「や…別に殴り合いじゃないんだが…これってやっぱお前らにも報告しなきゃいけないんだろ?」
「…? 出来たら教えてもらいたいが」
何を言っているんだ、という表情で真田が答えると、やっぱり、と向こうは目を逸らした。
「じゃあ、お前ら絶対行くもんなぁ…まぁ俺も反対はしないけど」
「…一体何が起こってるんスか?」
勿体ぶらないで教えて下さいよ、という切原の訴えに、向こうは已む無く見たままの真実を述べた。
「……酔っ払いに竜崎が絡まれてる」
『急げ――――――っ!!』
真実を聞かされた瞬間、メンバー達が物凄い速さで店の方へと向かった。
人混みを抜けて向かうには多少の労力が必要だが、常日頃から鍛えまくっている男達にとっては簡単なことだ。
「そーゆーコトは早く言えってのいジャッカルーッ!!」
「いやだってあの格好…本当にアイツかちょっと混乱して…」
「いいから急ぎますよお二人ともっ!!」
不貞の輩にあの子が触れられるなど冗談ではない!!と柳生が焦りつつも二人に声を掛けて現場に急ぐ。
確かに店の周囲には、中が空いているのに対し野次馬らしき人垣が出来ていた。
三強から少し遅れて柳生達がその場に到着すると、既にケリはついたらしく、桜乃をしっかりガードしている幸村達の足元に、酔っ払いだったのだろうと思しき浴衣姿の中年男性がのびて寝転がっていた。
「ゆ、幸村さん、皆さんも…どうしてここに!?」
「ごめんね竜崎さん、騒がせて。人の波に圧されて、勢い良く押し出された拍子にぶつかっちゃった」
えへ、と照れ臭そうに笑う幸村は、あくまでも爽やかで人畜無害な若者の姿だったが、無論、立海メンバー達だけはそれに騙されてはいなかった。
(蹴ったんだな…本気で)
(あの後頭部のコブ…押し出されたフリして背後からの一撃じゃったか…)
(人助けとは言え、少々えげつないですね幸村部長…)
他メンバーに対し、三強は『何のことやら』とばかりにけろっとしている。
「あ、有難うございます、助かりました〜」
「気にしないで、本当に偶然だったんだから」
絡まれていた桜乃は、無論彼らの真の思惑に気付く様子もなくひたすらに感謝しており、そんな彼女に彼らはあくまでも優しく、偶然通り掛かったのだというスタイルで接した。
確かに今日こういう形で出会ったのは偶然そのもの。
酔っ払いに絡まれているのが桜乃だと知らされなければ、余計な面倒を避ける為にそのまま素通りしていた可能性もあったのだから。
そうならなかったのは、お互いに幸運だった。
「まぁ、俺達はたまには遠出をして気分転換しようと思ってたんだけど…」
当たり障りない理由を述べつつ、幸村はちら、と桜乃の姿を改めて眺めた。
おさげではなくアップされた髪、淡い色合いの風情ある浴衣姿…は良しとしよう。
しかし、それに更につけられているフリルが入ったエプロンは…?
「…」
どう見ても、普通に祭りに出かける姿には見えないのだが…
考えつつ、幸村達は彼女と彼女がいるこの場所を数回交互に見遣った。
エプロン姿の、まるで女給の様なスタイル…客に軽食や飲料を提供する模擬店…
そして何より、彼女と同じ姿の女性達が店内で働いている姿…
導き出される答えは…一つしかない。
『…友達と遊ぶと言ってたよね?』
「あうう…結局バレたぁ…」
酔っ払い騒動のお陰で、結局秘密が露呈してしまった少女は、ぐっすんと嘆きつつ「兄」達の詰問を受けてしまったのだった…
「毎年、町内会で模擬店を出しているんですけど、参加しているウェイトレスさんにはお子さんがいるお母さん達も多くて…」
無事に酔っ払いは巡回していた警察に引き渡され、少し荒れていた椅子やテーブルの位置も元に戻され、模擬店は再び活気を取り戻して客達を迎えていた。
その一画のテーブルに立海メンバー達も着席し、桜乃の給仕を受け、丸井と切原が中心となってメニュー制覇を企てつつ事の顛末を聞いている。
「今年は、少しでもそのお母さん達にも子供と一緒にお祭を見て回ってもらおうって事で、友人達とボランティアをすることにしたんですよ。町内会の会長さんは、よく知っている近所のおじさんだし、ここはアルコールも扱わない健全仕様の模擬店ですから、物を運ぶお手伝いぐらいはいいよってお祖母ちゃんも…」
「そうだったのか…」
「でも、どうして黙ってたの? 教えてくれたら俺達も来たのに…まぁ、結局ここにいるから良かったけど」
納得していた柳の隣で、祭の定番メニューの焼きそばを前に置き、幸村が尋ねた。
彼の前に置かれている焼きそばの皿は一枚だが、切原と丸井のそれは裕に五枚は超えている。
「だからですよう…わざわざ都内まで来て頂くのは流石に申し訳ないですし、気を遣って頂くのも悪いですし……それに…」
「それに…?」
「………」
何か言おうとして、しかし何故か言葉を止めてもじもじと身体を揺らしつつ顔を赤く染める少女に、幸村がぴんときた。
「…凄く可愛いよ、その格好」
「あ〜ん、見られたくなかったのに〜〜〜〜!」
一番秘密にしておきたかった事を知られてしまった少女が改めて羞恥に騒いでいたが、メンバー達にしてみれば『ええもん見た』の心境である。
(あー、だから黙っとった訳じゃなぁ…)
(仁王君のアンテナに感謝ですね)
詐欺師と紳士も納得しながら、お好み焼きに手をつけている。
「…ところでさぁ」
焼きそばを食べる手を一時止め、丸井がきょろっと辺りを見回した後で桜乃を見上げた。
「友人達とボランティアって言ってた割には、おさげちゃんと同じ年頃の子って見えないけど…裏で洗い物でもしてんのかい?」
「あーいえ、そのう…」
更に桜乃の口調は歯切れが悪いものとなり、彼女はその疑問にぽつりと寂しそうに答えた。
「……ボランティアをやるって決めた後に、私以外の全員、ボーイフレンドが出来ちゃって…みんな、予定キャンセルでデートに…」
「おばちゃーん!! 焼きそば十人前持って来て、焼きそば!! ジャッカルのツケで!!」
「また俺かよ!!…でも今日は許す!」
「ジュースもね!! 後、お好み焼きも特大のヤツ!!」
言葉もない様子で幸村達三強が、なでなでなでなで!と桜乃の頭をなでくり回している一方で、丸井達は景気づけにとメニューを大量注文し、仁王達は桜乃を同じテーブルに座らせて、目の前にコップを置いてジュースの酌をした。
「まぁ今日は飲みんしゃい、俺が許すきに」
「貴女には、私達がついているじゃありませんか」
「ふええええん! 寂しかったですぅ〜〜〜っ!!」
いつの間にか、給仕をする筈の桜乃の方が、イケメンホスト達に心を慰められる客人の立場になっていた。
「…何だか俺まで泣けてきちゃった」
「いい子なのに…」
「相手の男共は何を見とるんだ…たるんどる」
しみじみと語る部長達に、切原が「あれ?」とばかりに突っ込んだ。
「じゃあ先輩方、遂に竜崎に恋人が出来てもいいと…」
『そんなコトは言ってない』
(この人達も大概、俺様気質だよなホントに…)
あの帝王とイイ勝負かも…と思いつつも、まぁそれでもいいやと切原が引き下がったところで、色々と慰めてもらった桜乃がようやく落ち着いて、かたんと席を立った。
「有難うございました、皆さん…でも私もそろそろまた頑張らないと。抜けられた分、人手がギリギリなんですよー」
「あ…そうか…」
「むう…課された仕事であれば止むを得んな」
幸村と真田が残念そうにしながらも桜乃を見送った隣で、柳が模擬店で働く別の女性を引き止めてぼそぼそと何かを話し込むと、徐に全員へと顔を向けた。
「竜崎は結局、祭の終わり頃までここで働くそうだ…ところで、飛び入りでもボランティアは受け付けているそうだぞ」
『…………』
参謀の一言から約十秒後…
「しょーがねーなぁ、おさげちゃんにはやっぱ俺がいないと」
「ナニどさくさに紛れて言ってるッスか、先輩達にだけ格好いいコトはさせないっすよ」
「切原、手伝うなら口と手、洗ってこい」
「カップルの女の方を誘ったら、男の方もついて来んかのう?」
「一歩間違えたら修羅場ですよ仁王君…」
がたがたがたんと次々と若者達が席を立ち、厨房の方へと向かっていく…勿論、ボランティア参加の許可を貰うためだ。
身柄は桜乃が証明してくれるだろうし、無料で働くというのだから、向こうも頑なに拒否はしないだろう。
「し、しかし、俺はあまりこういう場では役に立つ事は少ないと思うのだが…」
唯一、参加に及び腰だった副部長に、ぽんと柳が肩に手を乗せた。
「弦一郎、これから祭も佳境の時間に入る…大人達もアルコールを飲んで多少羽目を外す輩も出てくるだろう…丁度、先程竜崎が遭遇した男の様に」
「む?」
「となると、道を通る大人達の中にも同様の奴がいて、また店で騒動を起こす事も考えられる…女手が多いこの店では少々手に余るだろう…そこでだ弦一郎」
「ん?」
「剣道やテニスの試合の様な形式張ったものではなく、何でもアリの肉弾戦を経験する良い機会だと思わないか? しかも人の役に立ち、義にも適うことだ」
「俺に任せておけ」
思い切り真田の武士道心をくすぐる事でその気にさせた柳は、早速不埒な輩がいないか見回りを始めた真田を見送って、こっそり幸村とハイタッチ。
「奴がいれば、ガードマン十人分ぐらいは効果があるだろう。いちゃもんをつけたい人間は、つけやすい店を狙うものだ」
「彼が手持ち無沙汰になることもないしね…ご協力、感謝する」
そして全員、特にトラブルもなく参加の許可を受けると、桜乃と一緒に模擬店で即席バイトを始めたのだった。
ところが、ここから店の流れが大きく変わってきた。
「切原、焼きそば三人前上がったから持ってって!」
「はいはーい!」
「こっち、ジュースとラムネ、追加じゃ」
「私がお持ちしましょう」
「いらっしゃいませ、四名様ですか?」
「…………」
レギュラー達がてきぱきと仕事をこなす様を、桜乃が半ば呆然と見つめていたかと思いきや…彼女が見ていたのは、明らかに空気が一変してしまった店そのものだった。
(かっ…完全にホストクラブになってる…!!)
浴衣姿のイケメン男子達が丁重にもてなしてくれる、女性にとってはこれ以上ないパラダイス。
しかも、形式は祭の模擬店であり、出てくるものも軽食にノンアルコールばかりのものというところが、ホストクラブ的な一種のいかがわしさを払拭してくれているのが更に敷居を低くしていた為、瞬く間に店は女性客で溢れかえってしまった。
「はい、追加ですか?…すみません、混んでいますから少々お時間頂きますが…そうですか、有難うございます」
(うわ〜〜〜…笑顔と話術だけでどんどん注文が入ってくる…立海って本当に何でも最強だぁ…)
呆然としているところで、ぽん、と柳が桜乃の肩を優しく叩いた。
「竜崎、疲れてはいないか? 少し休んでいても構わない」
「あ、だ、大丈夫です! 急に忙しくなってきましたからびっくりして…」
「そうか…しかし俺の予想では、これからまた道を行く人々の流れは変わってくる。設定目標金額に到達する為には、そこで如何に客を回すかが肝心だ、今以上に忙しくなるぞ」
「え…目標…?」
そんなのいつ、と思ったところで、柳は厨房に小さく貼られていた付箋紙に書かれていた数字を指し示した。
おそらく、この店を設営する時点で町内会が決めた目標金額だろう。
「俺達が入った以上、あの倍額は稼いで然るべきだ。目標は高いほうが張り合いも出る」
「えええ!!」
桜乃が吃驚している向こうでは、また新たな客をテーブルに案内するメンバーの声が元気良く響いていた…
そして賑やかな祭の一時は無事に過ぎていき…
「…どうだ?」
「……当初の目標金額の二百七パーセント、作戦は成功だ」
『いやった〜〜〜〜〜〜い!!』
閉店間近…つまりは祭のイベントも終わりに差し掛かり、道行く客の姿もまばらになった店の中で、最終的な売り上げを町内会の大人達数人と見守っていたメンバー達は、柳の発表に歓声を上げていた。
勿論、そこには桜乃も一緒にいる。
「きゃ―――! やりましたぁ!」
ぴょこぴょこと飛び跳ねる桜乃と彼らが一緒に喜んでいる一方で、大人達も驚きを以って今夜一晩の成果を見つめていた。
「いやぁ、大したもんだ。若いってのはそれだけで強いもんだなぁ!」
「しかもあれだけ賑やかで人も多かったのに、今年はトラブルらしいトラブルもなかった。アンタが目を光らせてくれたお陰だな、有難う」
「い、いや…」
褒められた真田が、少し照れ臭いのか返事が曖昧なものになっている。
確かに、トラブルを起こしそうな輩は数人店に来てはいたが、その全員を彼の眼力で追い払ったのは事実だった。
「良かったね、竜崎さん」
「はい!!」
幸村の呼びかけに桜乃が大きく頷いたところで、会の役員の一人が桜乃とメンバー達の人数分の茶封筒を持って来た。
「ボランティアということだったが、これだけしてもらっては少しぐらいはお返ししないとね。君達が最初に来た時に食べた分と、これがお代だよ。少なくて申し訳ないが」
最初は勿論断った幸村達だったが、向こうもどうしてもそこは引けないということで、已む無く彼らはそれを受け取った。
「うーん…確かに労働に対してはその分の見返りはあって然るべきだけど…」
「少々申し訳ない気もするな」
幸村と柳がそう言っていると、そこで丸井がにょっと顔を出してあっけらかんとした口調で言った。
「なーに難しいコト考えてんだよい、そんなん使うべきことに使えばいいだけの話じゃんか」
「使うべきって…?」
勿論、汗水流して稼いだお金を無駄に使うことはしないけど…と幸村が返すと、丸井がぐっと拳を握って断言した。
「まだ祭の時間は残ってんじゃん! これからおさげちゃん連れて皆でデート! これはその軍資金ってコトでどお!?」
『!!』
「…え?」
何事…と思っている桜乃の腕がぐい、と引かれ…
「え? え? え?」
まだ全てを把握出来ていないまま、ずるずると少女はメンバーによって借り出され、
「よし、行こうか竜崎!」
「欲しいモノあったら言えよ」
「(女友達に)捨てられた悲しみは、俺達が慰めちゃる」
「仁王君が言うと卑猥に聞こえるのでやめて下さい」
「あ、あのあの…」
戸惑う桜乃に、振り返った幸村がにこりと笑った。
「ここにいる織姫様はよく働いたよ…これから少しの時間遊ぶぐらいは、天帝も許してくれるんじゃないかな。だって今日は七夕だよ」
「!」
そうだった…忙しくてすっかり忘れていたけど今日は七夕…一年に一度の逢瀬の日。
はっとした桜乃は、今度は忙しさからではなく褒められた照れで顔を赤くして笑った。
私が織姫なんて図々しいけど…でも、そうだとするなら彦星はやっぱり…
「……かもですね。八人の彦星様もよく働いてましたから」
桜乃の言葉に満足そうに全員が笑ったところで、さぁと幸村が言った。
「行こうよ、楽しい時間は少しでも無駄に出来ない」
そして彼らは、ようやくゆるりとした語らいの時を迎えて、楽しく賑やかに祭の中を歩いて行った……
後日
「竜崎さん、お祭の時はゴメンねー、キャンセルしちゃって…」
「あ、ううん、いいよ。ヘルプの人達も来てくれて、何とかなったから」
青学での休み時間、桜乃はクラスメートとあの日の事について何気ない会話を交わしていた。
立海のメンバーが来たと具体的に言ったら、そこからまた騒ぎが起きそうなので、そこは控えた方がいいだろう。
「ところで、デートは上手くいった?」
「もぉサイアク! デートしてたら向こうの元カノとばったりで、気まずくなっちゃって」
「あらら…」
それは残念だったね、といたわる桜乃に、友人ははぁ、と息をつくと、ところで、と切り出した。
「私はデートで気がつかなかったけど、どっかの模擬店が、物凄いイケメン達を呼んで限定ホストクラブやってたって聞いたんだけど、知らない?」
びくっと桜乃の肩が震えて、一瞬目が泳ぐ。
「そっ…そんなトコあったんだ…?」
「あー、竜崎さんは奥手だから知らないかも…何かね、どっかの店で働いていた子が、実はすっごいお金持ちのお嬢様で、彼女のお抱えのホスト達を呼びつけて手伝わせてたって話なの。結構青学でも噂になってるし、見たかったなぁ…来年もあるかしら」
「どっ……どう、かな…」
恐いぐらいに覚えがある…ついでに家に帰れば証拠もある。
間違いなくそのホスト達は立海のメンバーだ…あの日、仁王達から貰ったカエルのぬいぐるみ等の景品一式は、今も自分の部屋の各所に鎮座している。
「? どうしたの? 顔色悪いよ?」
「う、うん…スゴイ噂だなと思って…」
「でしょー!?」
彼らを自分が呼びつけた訳ではないし、そもそもお金持ちのお嬢様でもない。
本当に…何処でどうしたらそんなにわさわさと枝葉がついてくるんだか…
(ら、来年は悪いけど、ボランティア辞退しようかな…)
噂は噂のままに封印しよう!と心に決めていた桜乃だったが、町内会本部で既に来年の模擬店のメンバーに、桜乃と彼女の友人達が誘致されようとしている事実は知る由もなかった…
了
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