「ふぅ…只今戻りました」
 その日も部活動で心地良い汗を流した副部長は、家に戻って声を掛ける。
 途中で馴染みの書店に立ち寄ってしまった所為で、いつもよりはやや遅めの帰宅となってしまったが、彼が声を掛けても、誰の返事もない。
 仕事に行っている両親はともかくとして、妹は帰宅している筈だが…?
 思いながら玄関で靴を脱いで上がると、真田はすたすたと廊下を歩き…途中で台所の方から物音を聞いた。
 どうやらあの音の様子だと、夕食の準備をしているらしい。
 成る程、それで聞こえなかったのだな、と納得して、真田は取り敢えずは自室に戻ることにした。
 そのまま方向を変えて自分の部屋の前に到着し、すっと襖を開く…と、

『お帰りー』

 同じレギュラーメンバーの一部の面々が、そこのこたつに入り込んでこちらに向けて爽やかに挨拶…自分の部屋なのに。
「……」
 一瞬、無言になった真田はそのまま襖をぱたんと閉める…が、改めてそこが自分の家で、且つ、自室であると認識した時点で、今度はばんっ!!と勢い良く襖を開け放ち、物凄い形相で怒鳴り込んでいた。
「お前ら人の家で何しとるんだ――――――っ!! ここは俺の部屋だぞ!?」
「見て分かる通り暖を取っとるんじゃ。あ〜、ぬくいの〜〜」
「だから『お帰り』って言ったのに」
 こちらの怒りなど関係ないとでも言う様に、仁王と幸村が呑気に答える…こたつの中で。
「断りもなく用件もないのに、人の家に勝手に上がり込むとはいい度胸だな…」
 どうしてくれようかとわなわなと震える真田に、幸村は相変わらず和やかな笑顔を絶やさずに言った。
「嫌だな、許可ならちゃんと貰ったよ…『桜乃ちゃん』に」
「『皆さんならお兄ちゃんの親友ですし、いいですよー』ってさ。ねー?」
 そう言って丸井がこたつに潜ったまま、身体の前で抱っこしている三毛に同意を求める。
 どうやら彼はこの子猫が気に入ったらしく、それからも相手の両前足を握って、にゃごにゃごにゃご…とダンシングさせて遊んでいる。
 傍のジャッカルも今は猫の肉球に夢中になっている様子で、脇目も振らずにぷにぷにとそれを押していた。
 怒りで声も無い真田に、更に幸村は一本のボールペンを差し出した。
「用件もあるよ。借りてたこれ返そうと思って、ついでに皆も一緒に来たんだ」
「それは確か、俺がお前に一月前に貸したボールペン……」
 昨日、一昨日の話ならまだしも、一月も前に借りたペンを今更わざわざ家まで届けるという事もあるまいに!
「そもそも!…ん?」
 まだ怒りは収まらない真田だったが、よく見ると全レギュラーが揃っている訳ではないらしい。
「…蓮二と赤也はいないのか」
 あの二人はどうやらまともな判断をした様だな…と思ったのも束の間で、
「ああ、お二人なら桜乃さんのお手伝いをしようと台所に…」
「それを早く言え!!」
 相手が誰であってもどうしても異性が妹の傍にいるのは不安なのか、慌てた真田が台所に向かおうとしたのだが、時は既に遅かった。
『きゃ――――――っ!!』
「桜乃!?」
 いきなりあの妹の叫び声が聞こえてきて、流石に真田だけに留まらず、他のくつろいでいたメンバー達もぎょっとする。
 そして、兄が現場へと向かう前に、台所から真っ直ぐ来たらしい桜乃がそこへ駆けてきた。
「お、お兄ちゃん!?」
「桜乃! 何があった! 敵襲か!?」
 縋りつく妹を抱きとめながら、真田が血相を変えて尋ねると…
「ごっ…ごめんなさい、お兄ちゃん…わ、私が力不足だったばっかりに切原先輩が…」
「え?」
 何の事か分からず困惑していると、今度は遅れて柳がその場に歩いてきた。
 何となく…顔色が悪い上に、物凄く渋い表情の様に見えるのだが…?
「蓮二…?」
「……俺でも見た事が無い化学反応が台所で…」
 ぼそりと言った後で何も語ろうとしない参謀の様子を見ると…余程の惨事があったらしい。
 そう言えばあの二年生エース…家庭科に関しては『ヤツが通った後にはペンペン草一本生えやしない』とまで言われていた様な…
「……赤也、だな?」
 念の為に確認すると、桜乃がしくしくと嘆きつつもこくんと頷いたのだった…


 結局、一度目の料理は廃棄処分とし、二度目は桜乃個人で料理することになった。
 汚れた台所の片づけを終えた後、柳と切原は真田の部屋に撤収…因みに切原に関しては隔離とも言う。
「何で鍋に具とダシ汁を入れて火にかけただけで、鍋ごと爆発炎上するんだ…」
「俺が知りたいッス…」
 台所の惨状を見た真田が、こたつに入っている様子の切原に対し追求していたが、向こうはべたーっとこたつの上に頭を乗せてぐじぐじとかなり落ち込んでいる様子。
「蓮二でも解析不能だなんて…凄かったんだね」
 あの子が悲鳴を上げて走ってきた時点でただ事ではないと思っていたけど…と幸村も別の意味で感動している。
「鍋料理って、確か具を入れてだし汁でゆでるだけ…なんだよな?」
「ざっくばらんに言えばな」
 それなのに、爆発…?
 丸井とジャッカルは、相変わらず三毛で遊びながらも首を傾げて考えたが、どうしても一般人を納得させるような回答が思い浮かばない。
「すまん、弦一郎…俺の力不足だ」
 責任を感じているのは切原だけではないようで、付き添っていた柳もらしくもなく落ち込んで肩を落としている。
 と言うよりも、台所で起きたあの化学反応の仕組みが分からなかった事実が、彼のプライドに大きな傷をつけたのかもしれない。
「…仁王君、何をしているんです?」
「いや、何かの役に立つかもしれんし」
 柳生が少し呆れた様子で見ている先では、仁王が嬉しそうにメモに書き込みをしている。
 まさか後輩を犯罪の道具には利用しないだろうが……
 そうしている内に、一度は切原に邪魔された追及を思い出した真田が、再び幸村に振り返った。
「ペンを返すついでに夕食を馳走になろうという算段か?」
「酷いな。鍋の材料は俺達が買って来たのに」
 流石に長年の親友付き合いのお陰か、幸村には一切の怯えの気配はない。
「は?」
「だって桜乃ちゃん、団欒に憧れているなら人数多いほうがいいかと思って、勉強会をここでしようって決めたんだよ。鍋の具材は部屋代代わりって事でね」
「部屋の持ち主の俺には、そんな話一切無かったが…?」
「弦一郎は部活の指導で忙しそうだったから、真田家の代表は桜乃ちゃんってコトで」
(相変わらず見た目の理由が完璧だな…あくまで見た目だが)
 真意は分かっているのだが、それを証明する方法がない以上、真田にはこれ以上追求の仕様がなかった。
「お鍋ですよー」
 そうしている内に、今度は桜乃だけで準備したお鍋が彼女の手によって運ばれてくる。
 皆の歓声が上がる中で、真田は今更仕方ないかと半ば諦めて、論議を一度打ち切った。
 それからは、楽しい団欒での夕食タイム…になる筈だったのだが、
「あーっ!! それ俺が狙ってた鶏肉〜〜〜っ!!」
「へっへー、早いモン勝ち!」
「ブン太、切原、喧嘩しない」
「おかわり、まだありますよー」
 食べ盛りの中学生男子八人が揃ったとなると、最早食卓は戦場と同義語。
 飛び交う牽制や怒涛の箸による攻防に加え、補給物資は入った傍からごっそりと抜き取られてゆき、桜乃は戦線を見守るどころか休む暇もない。
「御免ね、桜乃ちゃん。行儀良くするようには言ってるんだけど…」
 流石に疲れているだろうと幸村が声を掛けると、桜乃は意外にも…
「いいえっ!! こんなにやりがいのある夕食なんて久し振りですっ!!」
と、目をキラキラさせて非常に嬉しそうだった。
 まさに、これが働かずにおられようか!という程の熱血モード発動中。
(根っから働き者…)
 感心しているジャッカルの向こうでは、切原が小皿に何かの物体を載せて三毛へと差し出していたが、向こうはぷいっとそっぽを向いて顔を近づけようともしない。
 しかも、後ろ足で砂を掛けるような仕草までされてしまう始末。
「カンジ悪っ!!」
「と言うより、何だそれは…料理名どころか材料の予想さえつかないんだが」
 柳の質問に、切原はまだ猫にそれを食べさせようとムキになりつつ答えた。
「いや、さっき俺が爆発炎上させた料理が勿体無いからこいつに…」
「ウチの子に地球外生命体を食わせるな―――――っ!!!」
 瞬間、見事に三毛の保護者でもある真田の爆弾に火が点いて、切原に正義の鉄槌を食らわせていた。
 その隙に、ぴょっと逃げた三毛は、そのまま傍の仁王の膝元のこたつ布団に入りこむ。
「……」
 意外な来客に視線を落とした仁王は、もぐもぐとおかずを食べながら相手につみれを小さくちぎって分けてやる。
 三毛も仁王の手からは喜んでそれを食べており、柳生は無言でそんな彼らの様子を観察していた。
(…類友)
 何だかんだで楽しくも厳しい人生の縮図の様な夕食は続き、全員が満足した頃には見事に綺麗さっぱりと、全ての食材は彼らの胃袋の中へと姿を消していた。


 夕食の後は本来の目的である勉強会…だった筈なのだが…
「…順番間違ったね」
「全く…」
「赤也の口約束など、信じるに足るものではないと分かってはいたがな」
 苦笑する幸村の隣では部屋の主の真田が不機嫌そのものの表情…そして更に隣では柳がペンを片手に辺りの様子を見渡して溜息をついている。
 『必ず勉強会には参加しますから、先ずはメシにしましょ、メシ!!』と威勢よく語った口はどの口か…
 呆れ返る三強の目の前には、メンバー達が完全に脱力した姿が展開されていた。
 流石に柳生はしっかりと紳士然としているが、他はうつらうつらと心地良い睡眠に誘われている様子で、口約束をした当人の切原や丸井に至っては、堂々とこたつの中で惰眠を貪っている有様。
「気持ちよさそうに眠ってますね」
 ようやく食事の後片付けを済ませた桜乃は、くすくすと笑いながらそんな先輩達を見つめていたが、ふ、と顔をうとうとしているジャッカル達へと向けて首を傾げた。
「お茶、煎れてきましょうか。少しは目が覚めるかもしれませんよ?」
「あ〜〜、悪い…とにかく今は眠くて…」
「日本の文化万歳じゃの〜〜」
「仁王君、しっかりなさい」
 皆が一様にそれに賛成の意を示し、桜乃が頷いたのだが、真田が彼女を止めて立ち上がった。
「桜乃、お前は少し休んでおけ。茶ぐらいなら俺でも煎れられるからな」
「え、でも…」
「いいから、少し暖を取っておけ。お前は今日は少し働きすぎだ」
 尤もな言葉で相手を押し留めると、真田は先に台所へと向かってしまった。
「…座ったら? 桜乃ちゃん」
「は、はい…」
 幸村に促されて、桜乃は言われるままにもこもことこたつに潜り込み、それから改めてグロッキー状態の先輩達を見回した。
「…よくお食べになっていましたからね」
「いつもなら容赦なく叩き起こしてグラウンド回らせるんだけどね…今日は特例として見逃すよ、折角ここの家で美味しい食事をご馳走になったんだし。明日からまた取り戻せばいいだけの話さ、ねぇ、蓮二」
「無論だ。トレーニングの計画も既に修正済みだ」
「相変わらず、隙がないですねぇ」
 流石です、と笑って先輩達を褒めると、桜乃は傍でこたつに潜って畳に寝転んでしまっていた切原に、こたつ布団を肩まで引き上げてやる。
 それから、他の眠っているメンバーも風邪を引かないようにと同じく布団をかけてゆき、そしてようやく彼女も落ち着いた様子だった。
「でも、今日は物凄く楽しかったです。こんなに楽しい夕食なんて久し振り」
「誘われた時には驚いたけど、喜んでもらえたなら良かった。でも、どうして急に?」
「だって…こうしてお兄ちゃんが他のお友達と一緒に騒いでいる処なんて、滅多に見られませんから」
 にこ、と笑って、桜乃はそう答える。
 そう。
 今日、部室で真田家のこたつについて聞いていた幸村達は、桜乃からこっそりと家へのお誘いを受けていたのだった。
 確かに、幸村達も真田の家に押しかけたい気持ちがあったのは事実である。
 しかし今回、真田本人には幸村が画策して押しかけた様に言っていたが、その作戦の張本人は桜乃だったのだ。
「すみません…女子が男子を家に誘うなんて、お兄ちゃんのお友達でも許して貰えなさそうで…」
「いいよ、信用してもらっているって事だろうし、気にしないで」
(申し出がなければ、どの道こいつが実行していただろうしな…)
 柳はこっそりとそう思いつつ、相手の後ろにぴこぴこと揺れている黒い尻尾を見ていたが、結局何もそこでは言わなかった。
 何も知らない少女は、ほう、と軽く息をついてにこりと笑う。
「弦一郎お兄ちゃん、あまりお友達を家に呼ぶ事がなくて…呼んだと知った時は私が家にいない時ばかりで、あまりそういう場所でのお兄ちゃんを見たことなかったんですよー。でも良かった、本当にお兄ちゃん、皆さんの事がとても気に入っているみたい」
(ああ…それはあれだな…)
 思い当たる節が有り過ぎて、幸村と柳は心の中でうんと頷いた。
 覚えている…真田は幼少時から桜乃に悪い虫がつかない様にと男友達は極力家には呼ばず、呼ぶ場合には妹を外出させていたのだ。
 無論、裏でそんな事があったとは、桜乃本人は知る由もない。
「お兄ちゃんは、お友達と一緒に楽しく遊んだり部活もやっているって言ってましたけど、殆ど見ていないのが悔しくて…だから今日は堪能させてもらいました〜」
「そう」
 微笑んで頷く幸村に、桜乃は胸の前で両手を組み合わせながら願った。
「あの、是非これからも、弦一郎お兄ちゃんと仲良くしてあげて下さい。宜しくお願いします」
「勿論、こちらこそ宜しくね」
 兄を気遣う優しい妹に親友達は悩む事もなく頷いた…頼まれなくてもこちらから手放すつもりなど毛頭ない。
 真田は、自分達にとっても掛け替えのない親友なのだ。
「良かったぁ…じゃあ、後は…」
 安心した桜乃は、早速次の自分の野望に向けてガッツポーズ。
「お兄ちゃんに、お似合いの恋人さんが出来るように、私もお手伝いを!!」
「……君が先に恋人作った方がいいと思うよ」
 それも大仕事だとは思うものの…少なくともこの子が独り身である限り、あの男が自分の恋人を持とうなどという気持ちを持つ筈が無い。
「え? そ、そうなんですか?」
「うん、きっとね。君の理想の男性ってどんな人なの?」
 さり気なく機密情報を聞き出そうとしている部長に、柳が感心した視線を向ける。
 やはりやるな、この男…
「うーん…理想ですか…それはやっぱり…」
 ちょっと考えて、桜乃はうんと頷いた。
「強い人が好きです…お兄ちゃんみたいな人」
「真田に勝ったら、その男と付き合うってこと!?」
「それって武道?」
「テニス?」
「闇討ちで勝つのは有効かの?」
 途端、今まで眠っていると思っていた先輩達が一斉に起き出してきて、わらわらわらと少女の周りに集まり、質問攻めを始めた。
「えっ? えっ? ええっ!?」
「…君達さぁ」
 現金な部員達に呆れた声をかけた幸村だったが、彼はそれ以上は何も言わなかった。
 自分などよりもっと適任の指導者が来たからだ。
「…貴様ら」
『!!』
 はっと皆が地を這う声に気付いて振り返ると、盆上に湯飲みを複数載せた真田が怒りの修羅像宜しくそこに立っていた。
 いつから聞いていたのかは定かではないが、既に堪忍袋の緒がちぎれまくっているのはよく分かる。
 今日ばかりは、妹が止める隙も暇もなかった。
「面白い! 表へ出ろ!! 貴様らまとめて相手してやるわ――――――っ!!!」
 びしゃ――――――んっ!と怒りの雷が落ち、再びその場は大騒ぎ。
「あああ、すみませんすみません…私の所為ですか?」
「気にしないで、皆の自業自得」
 平謝りに謝る桜乃の頭をよしよしと撫でながら、部長は大爆発している副部長を遠目で見遣り、でも、と心の中で言った。
(…隠れて立ち聞きしていた分は弦一郎にも非があるんだし、後で助け舟ぐらいは出してあげようかな)
 妹から理想の男性と言われて、心の中はまんざらでもないんだろう、と思いつつ、彼は暫く親友の好きにさせてやっていた……


 その後…
「たわけが」
「くそ〜〜〜〜!!」
 立海のコートでは、切原が膝をついて悔しがり、対面のコート上では真田がふんと鼻を鳴らしていた。
 ここ数日、やけに真田とシングルスで対戦するレギュラーの姿が頻繁に見られ、非レギュラー達の間で何事だろうと騒ぎになっている。
「頑張るねぇ」
「動機はどうあれ、部員の奮起になる上、レギュラー達の能力上昇に一役買っているなら歓迎だ。見ろ、このうなぎ登りの線グラフ」
 柳が自分のノートを示し、幸村がそれを確認しているところに、真田がラケットを持って戻って来た。
「実力は認めるが、まだ俺の相手ではないな」
「切原は今後が楽しみな逸材だ、成長を期待しよう……ところで弦一郎」
「うん?」
「今日も君のところに集まっていい? 皆で勉強するのって楽しくてさ」
「う…またか?」
「だって、自室が一番広いのって君のところだし…こたつあるし」
 何より桜乃ちゃんがいるからね、とは言わず、幸村はどうかな?と確認を取る。
「…別に構わんが…」
 言いながら、少し不満げに真田が苦情を述べる。
「お前らが来てから、俺の部屋が段々カオスになっていくんだが…」
「捨てたらどう?」
 妙な置物や得体の知れない物体があるのは何故なんだ…と渋い顔をする相手に、幸村はきっぱりと言ったのだが、向こうはすぐには首を縦に振らない。
「そういう訳にもいかんだろう…ううむ」
 困った…と呟きながら離れて行く真田の背中を見つめ、そして柳へと視線を向けて、幸村はくすりと笑った。
「色々言ってるけど、弦一郎も楽しいみたいだね」
「そうだな」
 本当に嫌なら断固として断る筈だし、物品も容赦なくゴミとして出している筈だ。
 はっきりと口には出さないが、気難しい副部長も、たまに家で皆と騒ぐ事はやぶさかではないらしい。
「…で、お前は弦一郎に挑戦しないのか? 一番勝率は高いのだが…」
「今そんなコトしたら、弦一郎が死んじゃいそうだからヤだ」
 結局最後まで部長の真意は定かではなかったが、それからも立海男子コートには心地良いボールの音が幾つも響き、平和な時間が流れていた…






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